今日のコラム 実験空間創造学
メインタイトル:ロボットに「心」は宿るのか?
サブタイトル:『攻殻機動隊』に見るヒトとロボットの未来社会
講師:神山健治/監督、脚本、演出 AND 瀬名秀明/作家・薬学博士
備考URL:http://www.kitnet.jp/sozogaku/index.html
第73回実験空間創造学
ロボットに心は宿るのか 攻殻機動隊に見る人とロボットの未来社会
前回の創造学は人がかなり少なかったが、今回はジャンルがうちの大学と適合するのか人が多い。70人くらいが居た。5時から開場かと思っていたが、遅れ17時15分ぐらいに開場した。友達と、中段中央付近の席を確保。座る。気になっていたが、この講話が始まる前は、関連性が強いサントラが流される。2ndGIGのサントラからだったが、どのシーンで使われた音楽かわからなかった。10分考えて、やっとわかった。2ndGI1話の素子が、テロリストを殺すシーンから流れる、I can’t be cool だった。その後、曲が変わりつつ、時間が過ぎる。5時30分。開演。前にスクリーンが二つあるのだが、その映像が、SACのCG版OPに変わった。Inner universe があわせて流れ始めた。途中で、神山健治氏(以下神山氏)と瀬名秀明氏(以下瀬名氏)の紹介が挿入された特別バージョンだった。それが本放送分と同じ長さで放映され終わるところで、GET9にBGM変更。両氏が入場した。
瀬名氏が司会をし、神山氏がそれに答えるという形式で進んだ。まず、神山氏の自己紹介が軽く、次に瀬名氏の自己紹介が軽く行われた。神山氏の自己紹介では、GIGの状況やDVDの発売情報など一部宣伝も行われた。
本日は、日本とロボット。日本のロボット産業、ロボットはどこまで近づけるかの3つを順に話してゆく。
まず、日本とロボットについて。
瀬名氏が神山氏に尋ねる。神山氏にとって、ロボット感は?
神山氏:
マジンガーZの影響が大きい。操縦型のさきがけだった。
自分で動かすというのが、面白かった。
機動戦士ガンダムもその後影響を受け、仕事につくきっかけとなった。
瀬名氏:
操縦という意味では、パトレイバーは操縦ですね。
神山氏:
パトレイバーはリアルロボットの最終形態だった。
その点から、リアルロボットの寿命を早めてしまった側面がある。
パトレイバーのリアル性は物語の中でのロボットの存在性と現実性でこれ以上のものは無い。
瀬名氏、ロボットの紹介でレイバーに似た、HPR2を紹介する。
最近のロボットについて
瀬名氏の解説:1960年代のピアノを弾くロボットの映像の紹介。 出展:ネットワークロボット技術に関する調査研究室(だった。はず) 経済産業省によるネットワークロボットの分類表の紹介
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/netrobot/pdf/030711_2a.pdf
の5枚目の図が引用されて表示される。
・ビジブル型:人間型
・アンコンシャス型:センサー型
・バーチャル:電脳空間稼動型
ロボット特区や阪大のリプリーQ1の擬体エージェントの紹介。
擬体に関連して、攻殻機動隊の義体の定義に関連した話になる。
神山氏:
攻殻中の義体は、士郎正宗氏が言うように、医療的な義手・義足の発展系。
だが、身体拡張も出来る。本来なかった能力を手に入れる最終系ではないか。
攻殻で義体の世界はあまり夢が生まれなかった。
人間の体を失った人という悲壮感が自分の中で生まれた。
TV内では素子の描写を含め負のイメージを極力避け、
薄くしてきたという意識があった。
瀬名氏:
草迷宮の話が印象的でした。折り紙を折るシーンが。
神山氏:
義体が技術として生まれ、過渡期となった時期にあったと思われる悲劇の一つだと思 う。
技術者が解決をしてゆくが、どこまで、精密な動作を出来れば、
義体として人間の体の代用が出来るのだろうか。
瀬名氏:
機械と人間性の両立はどうなんでしょうね
神山氏:
わからない。でも折り紙は僕は左手でも折れた。
スタッフにもやらせたら、出来たやつが結構居た。
人間は本気でやろうと思えば、できることが案外多い。
折り紙を折る行為は義体まで人間が進化する上では必要な技術だと思う。
瀬名氏;
その中で、劇中では人間の姿を捨てた、ジェムスン型義体がありますよね。
神山氏:
肉体は不要という考え方が生まれる可能性もある。
人間的な部分は、仮想体験で補っている。それでクリアしている。
ネットが脳と直結する世界では必要なのかと思う。
身体の皮膚感は、人間にとって必要な存在。
世界のロボット研究
仏:BIP2000韓国、ロシアのロボットの紹介 2本足ロボットの海外での不人気理由は宗教によるものだ。 人間に似た存在を作ることは、神を冒涜することになる。 日本では八百万の神なので、抵抗感が無かった。 しかし、欧米でもスターウォーズ。C3POの影響で変わってきた。
瀬名氏:
今後日本は高齢化社会になり、2007年問題という団魂世代のリタイアが近づいていますが、
それに対応するために、ロボットなり、アジアの人が日本で介護などの仕事を担うのではと思います。
それは2ndGIGの世界に近いですね?外国人や難民の問題として。
神山氏:
そうですね。でもそういう作業は外国人ではなくて、
ロボットの方が日本人にとっては良いと思う。
日本人はなんだかんだいって、単一民族である。
他の民族や外国人を本質的に好まない。
ロボットの方が心を許せていいのではと思う。でもその時顔がいるかな?
素子みたいな義体の綺麗なおねーさんが居ても、怖いでしょ。
瀬名氏:
アニメではわかりにくいですが、義体と生身の違いはわかるでしょうね
神山氏:
アニメは嘘がありますから。表現的にアニメ映像では区別しにくいが、
現実でああいう世界が生まれているなら、区別はある程度接近すればわかるはず。
その区別を無くす技術は進んでゆくと思うが、わかるはずです。
瀬名氏:
タチコマはその良くわかるロボットですね
神山氏;
タチコマはロボットですね。
3つ目ですし、蜘蛛みたいで、いっぱいあつまるとふなむし見たいできもちわるいですね(笑)
でもそれが、視聴者には受けたみたいです。
やはり、人間を模倣せず、ロボットらしいほうがいいのではと思います。
ここで、その映像例として、機械たちの時間のワンシーンが放映される。 バトー専用機とアンテナをつけるタチコマ映像部分近辺。3つ目が動くのが感情移入になった。 人の目だと悲壮感が出る。ロボットがロボットを管理構成したシーン。
神山氏:
人間そっくりのロボットはアダルト産業への利用が懸念される。→悲壮感。
ロボットは、コミュニケーション産業において進化してほしい。
会話機能が充実してくれることはうれしい。
インターフェイスを付けて、PCを動かすことはエンターティメント性がある。
タチコマはインターフェイス、動く両方持つ。
ロボットの種類の一つとして、パワードスーツの話になる。
瀬名氏:
APPLESEEDはパワードスーツの世界でしたね。
神山氏:
一時期、アニメでもはやったが、衰退をしてしまった。
たぶん、自分で作業することに飽きるのではないか。
人間、同じことをやっていると飽きる。
PCやゲームなどのインターフェイスを挟み、操縦することで、
人は長く飽きることなく、することが出来るのではないか?
アニメーターも、鉛筆で書くより、PCで書くほうが多くなった。
PCの存在はそれだけ大きいものと思う。
スーツ⇔PC等のインターフェイス⇔人間が理想だと思う。
リモート義体の方が操作するほうが面白いと思う。車の運転もそうだ。
自分で60km/hで走るより、車に乗って、60km/hで走れるほうが楽しいはず
寒いしね(笑)。最初は面白くても、飽きるはず。
操縦のカタルシスがある。
何か、インターフェイスを挟んで、あったほうがいいと思い始めている。
押井さんは、アメコミは自分の肉体を使うスーパーマンとかが主役。
日本のアニメは自分の体を拡張したりしたものだよと仰っていた。
瀬名氏:
ライダーの変身は、拡張する瞬間ですね
神山氏:
なるほど。
続いて、ロボットは人間に近づくことが出来るか?
人型ロボットの有効性 アイザックアシモフ。鋼鉄都市
人間の環境化や汎用性では人型
特化したロボットはロボット型 しかし、反論としてロボットの合わせた環境を作ればよいがある。
ヒューマノイド:個の身体性を再認識させてくれる。
神山氏:
リハビリでは代用できそうですね。
ロボットの自意識研究。→人間の方がロボットらしいのでは?
ペンローズ、心の影
A;強いAI
B:弱いAI
C:ペンローズ
D:神秘主義
瀬名氏:
神山さんはどれに当てはまりますか?
神山氏:
Cが近いけど、Dが入っているね。
タチコマはD。作品中では答えを出せなかったしね。
自意識:メタ認識操作、指向性、クオリア、トランスパーソナル心理学
STAND ALONE COMPLEX
瀬名氏:
さて、STAND ALONE COMPLEX(以下SAC)についてお聞きします。
個人への執着や他人の模倣などを描いたSACを考えた時と今の現実との変化はありますか?
神山氏:
SACって言葉は4年前に思いついた。
攻殻機動隊のアニメの仕事は4年前から始めていた。
まず、始めに当たり、情報がすごく、ネットワークに誰でもつなげられるようになった。
例としては、TVがあるね。
昔は昨日見たTVの話を翌日学校で話した。
でも今は、ネット上で放映後直ぐに話せる。
まして、リアルタイムで実況している点もある。
瀬名氏:
2chの実況板ですね。
神山氏:
その発達が、進む始めたときに、情報の価値が低下している。
また、都市と地方の格差が世界的にも縮まっている。
オタク文化が楽なものだと、わかったとき、それを多くが共有している事実がある。
これらが危険だと問題提起してゆくため、それをSACと表現した。
瀬名氏:
SACという言葉を思いついたときはどうでした?
神山氏:
独り立ちというコンピュータでも使われている。
STANDALONEとシネマコンプレックスやコンプレックスからCOMPLEXを使った。
ネガティブの人にその意味を聞いてみると、何それといわれた。
当時は、流行語大賞はこれで決まったと思った。しかし、余りはやらなかった。(笑)
でも、4年たってこれが変わってきたかもと思うようになった。
ネットで偽札やドンキの放火がSACではと言われる様になってきた。
だが、作品を作っている途中から、個性が並列化されても、
消失しないのではという疑問が生まれた。
私は、押井守を師とし、押井守原理主義者とよく言われます。
また、押井守が居ない時は、私が押井守の代用品でした。
しかし、4年間の作業のなかで、押井守氏と考えが変わってきた。
同じことをやっていても差異が発生しました。
瀬名氏:
その例はなんですか?
神山氏:
そうですね。年齢差ですか。私と押井守氏とは15歳違います。
当時イノセンスとSACは同時に活動をしていました。押井さんのイノセンスは、
肉体の喪失をテーマとしていました。
そのアフレコが終わって、SACのアフレコをした時、違和感を覚えた。
キャストは同じですが。具体的には年寄りくさかった。
SACの時は最初からNGを出した。
そして、押井守さんの指示より15歳若く演技をしてほしいと注文を付けた。
キャストの人はプロフェッショナルなので、直ぐに適応してくれ、
それは自分の思うとおりのものだった。
けど、押井さんからはキャストに変な癖が付いたなといわれましたね(笑)。押井守と神山は同じことをしているのに差が生まれてしまった。
情報を共有化することで、個が消失すると思っていたが、
違うのではとこのあたりから感じ始めた。
SACはそこから、タチコマの機体の差が無い中、
並列化の中で個性が生まれてゆくのが面白いのではないかと思った。
自我を作り出し、自己犠牲を出した。定番の要素だが、何か付加価値の発生を出した
瀬名氏:
クリエイトすることで個性は生まれるのか?タチコマはバトーの与えたオイル、
食べ物で獲得しましたよね?それが広まっていった。
自分で何かしたいという指向性が。クリエイションは重要なのでしょうか?
人間が行うロボット的行動の中での自分らしさに獲得についてどう思います?
神山氏:
毎年、クリエータの個性が弱くなっていると感じている。
アニメを作りたいから、IGに入りたいというものが多い。
それは個性であるが、希薄だと思う。
クリェイティブな作業の中で、突然伸びる人もいる。
そのきっかけは明白には判らない。
でも、具体的なイメージを獲得できた人が伸びるのではないかと思っている。
例ですが、マクドナルドの店員が、老人の人が注文に来た時に、若者と違って、
ゆっくり話したり、丁寧な対応をする考え方、行為をする必要があることに気付く人である。
そのイメージが出来た瞬間ではないかと思う。
アニメ作品を作ったり、攻殻を作ったりしていると、いつか飽きる。
その時に新しいものを作りたいと考える。
でもほとんどの人が、旧来のものの否定形となってしまう。
僕は、押井守と同じ作品を作りますといった。
同じものを自分で作ってみて初めて差に気付くのである。
それをくぐることが無個性から個性の生まれる時ではないかと思う。
考えにヒントがあると思う。
もう少し続くが、疲れたのでここまで、続きは明日公開する。
コラム;実験空間創造学
著者:大宇宙拡大大帝国絶対永久皇帝大帝国大元帥
2005.1.20 tHE IMPERIAL BLACKEye 2005