シルクロード全集5 天山南路を見て

 さて、昨夜放映された新シルクロードの感想を恒例のごとく掲示する。まず、旧シルクロードシルクロード 天山南路 音楽の旅。タイトルに有るように、音楽の旅であった。幾度と無く表明するが、新のシルクロードを好んでいる余であるが、旧も当時一斉を風靡したシルクロード特集を見れることは歓迎している。今回の旧シルクロードは残念ながら、余の評価の中では低い部類に入る。

 亀じ国(きじこく。じは規格外漢字。)の紹介から旧シルクロードは始まる。シルクロードの天山南路における東西貿易の中継地。きじこくが廃れた今、存在するクチヤ。音楽の街である。砂漠の中で様々な美しい音楽が奏でられる。その中には、我が国の国宝楽器、四絃琵琶の原典と成った楽器や我が国の素晴らしい宮中音楽雅楽を構成する最重要楽器である篳篥の原典があった。だが、その多くは現地でも消え、日本でしか現物が残って稲い惨状であった。
 クチヤの人々の結婚式や古い歌の紹介など音楽に関する事項が紹介され、最後に仏教都市、伽藍(がらん)に存在するクムトラ千仏洞が紹介される。この場所は新シルクロードでも紹介される。ここには、仏教壁画、伎楽天(ぎがくてん)図がある。仏が楽器を持って、音楽を奏でる絵である。その中には、今は現地に存在しない四絃琵琶が描かれている。非常に美しい青い色の壁画であった。




 新シルクロード。天山南路 ラピスラズリの輝き。
ラピスラズリは青い鉱石である。フランス人ギメが人工ウルトラマリンという青い色彩色を人工的に作るまで、ラピスラズリは、青い塗料として使われてきた。アフガニスタン地方からしか採取できず、ラピスラズリは同量の金と等量交換されるほど、貴重な存在であった。ラピスラズリは、本編では後半に登場し、それは主体的には扱われない。
 昨今、新シルクロード仏教壁画紀行という批判を聴いた。余はそうであろうが、無かろうが美しいものや新ものが見れれば、シルクロードでも何でも良い。今回も新シルクロードはそれらに人の意見と同調するように、仏教関連の内容だった。


 色即是空空即是色。有名な仏教の句である。本日の新シルクロードはこの有名な句をサンスクリット語から中国語に翻訳した僧。鳩摩羅什(くまらじゅう)の物語である。シルクロードは、文化、流通、思想の道である。仏教思想の伝播に焦点が当たった。鳩摩羅什は4世紀にクチャの王族として生まれた。鳩摩羅什の母は、権力争いを恐れて、子を仏教の道へ進ませる。鳩摩羅什は、天山南路を通り、クムトラ千仏洞などで修行した。そして、鳩摩羅什は有名な僧になった。


 鳩摩羅什の国、クチャは地形的にモンゴル方面の遊牧民族と中国臨海部の民族との争いの中間にあった。幾度と無く戦いに巻き込まれ、戦乱から回復してきた。しかし、ついに7万の兵に、クチャは占領され、鳩摩羅什は捕虜となってしまう。鳩摩羅什はそこで僧として反する行為を脅迫に屈し、やむ終えず行う。
 鳩摩羅什は破壊僧となる。仏教の戒律を破った僧に名づけられる僧侶であって僧侶でない存在。破戒僧。鳩摩羅什は苦難との戦いを始める。苦難の大きさから、言葉を失った。だが、鳩摩羅什はこの経験を持って、新しい思想を持つ。長安に連れてこられた鳩摩羅什は、王の命令で仏教経典の中国語への翻訳を行った。そこで、色即是空空即是色という句や極楽などという仏教を一般の民が理解しやすいようにアレンジした言葉が生まれた。
 その頃、占領されたクチャでは、平安時代末法思想の原典となる暗い思想が生まれた。だが、民はその中で、希望を託して青い鉱石ラピスラズリを使って、仏教壁画、伎楽天(ぎがくてん)を描いた。
 今回の新シルクロード。青い色を好む余はラピスラズリの輝きをOPで見たときから期待していた。だが、想像外に暗い内容であった。しかし、それが青く輝くラピスラズリを更に希望の満ちた色へ見せてくれた。ラピスラズリの青。




 色即是空空即是色。

仏教の真理を鳩摩羅什が広く伝えるために作った言葉。形あるものは実体が無く、必ず空ろって行く。実体や形に惑わされるな。

鳩摩羅什の訳した経典は、戦乱時代の民衆に心の自由を作った。


参考URL:http://www.nhk.or.jp/silkroad/detail/05.html ,http://www.hokoji.info/hannyasin-5.html ,http://www4.j-pal.ne.jp/yamabum/4mame.htm


コラム:シルクロード全集5 天山南路を見て
著者:大宇宙拡大大帝国絶対永久皇帝大帝国大元帥★
THE IMPERIAL BLACKEye 2005 2005.5.10

copy right 大宇宙拡大大帝国建国委員会 2004-2018.