渚にて―人類最後の日 (創元SF文庫)

渚にて―人類最後の日 (創元SF文庫)

渚にて―人類最後の日 (創元SF文庫)

 映像で涙を流したことは経験にあったが、書物で流したことは有史以来初である。嬉しくてはなく、悲しみを感じたから発生した現象だと思う。これに関しては、嬉しくで涙を流したことは先ほど挙がった映像を含めて如何なる事柄を持っても無い。
 今まで読んできた小説で何故このような事態が発生せず、この「渚にて」で初めて起こったのは説明できる。第一に、読書した冊数が未だ自慢できるほどでもなく、目に見えるものであることで、その様な書物に出会う機会が少ない。
 第二に、「渚にて」が最終的にはハッピーエンド(大団円)で集結する物語であると認識しながら読書したことである。とりわけ、後者が大きな原因と言える。
 かの「銀河英雄伝説」にても、まさかあの人物が殉職するなどという展開になることは全く想像できず、この後も覇権の構築に繋げていくものとばかり考えていた。そして、その人物を高く評価し現実の人物と似せて視聴していた筆者は、その出来事を見てその日は1時間ほど動けなかった記憶がある。
 「渚にて」も全く同じ環境であった。普通の日常に対する不均衡が、特にその現象を誘う。

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