最終戦争論

最終戦争論 (中公文庫BIBLIO20世紀)

最終戦争論 (中公文庫BIBLIO20世紀)

 本年度の目標は、優れた書の内容を読書を持って余の体内に取り込むことである。幸い我が大学の今期の編成は、非常に読書がしやすい環境となっている。欲張りを言えば、午前。特に一限が無ければ嬉しいが、そこまでは求めすぎかもしれない。
 さて、石原莞爾の最終戦争論を読んでみた。石原莞爾という人物を知ったのは、昔読んだ参謀本部陸軍大学校からである。参謀と陸大の本は、石原莞爾は成績優秀な人物であったが、特異な人物であったとあった。また、石原莞爾満州事変(支那事変)の不拡大を主張した人物である。満州事変の拡大は、日清戦争勃発そして、太平洋戦争を呼び、日本は敗戦した。石原莞爾の著物を読みたく、最終戦争論と戦争史大観を購入した。まず、先に読破した最終戦争論について、余の書評を掲載しよう。


 最終戦争論。数年前、ハルマゲドンという人類最後最悪の世界戦争が起こるという迷信が流布した時期があった。西暦1999年の出来事である。余は最終戦争論という題を観て、それを思い出す。最終戦争論は、そのような予言書に近い内容だった。だが、当時の書としては非常に先見性があり、石原莞爾が優秀な人物であったことが創造できた。そして、石原莞爾が提唱した最終戦争後に完成する絶対平和の統一国家は、大帝国思想と類似する点が存在した点があり、興味深い内容であった。
 石原は、戦争は2種類のものがあると唱える。決戦戦争と持久戦争である。決戦戦争は、曰く武力の価値が他の手段に比べて高い戦争。持久戦争とは戦争以外の価値、政治的手段などが高い戦争である。即ち、決戦戦争は、武力を持って短時間を持って戦争の勝敗が決定する戦争。持久戦争は武力の対峙が長く、勝敗の決定に数年から数十年を要する戦争のことである。石原は、これまでの戦争はこれらの2つが交互に入れ替わってきた戦争だと述べる。書中の図などを見ると、なるほど。決戦戦争、持久戦争、決戦戦争、持久戦争と入れ替わってる事実が判る。さらに、ここの分析が明瞭にそれを証明している。
 それらの分析の後、第一次世界大戦WW1を終えて、次に発生する決戦戦争の内容を考察している。諸君は理解できると思うが次なる決戦戦争は、我々の歴史から述べて、第二次世界大戦WW2である。その内容読めば大筋で正確に第二次世界大戦が予想されていたように感じた。そして、石原はこのような世界規模の戦争を最終戦争とし、その対立する国家を日本とアメリカと予想している。
 戦争に勝利した日本国の天皇陛下かアメリカの大統領のどちらかが世界を統一し、新しい国家を作ると述べている。この考察では、石原は日本人なので日本が勝利することを予言し、その為の準備も行っている。余も満州事変に深く介入せず、国力を増強できる事態になれば、アメリカに勝てたのではないかと思った。そして、その世界は、アニメであるがトップをねらえ!の世界地球帝国の世界観に類似するものになるのではないかと思う。日本がアメリカとの戦争に勝利し、地球の国家を統一する。物語は、特に世界地球帝国に関しては大きく触れず、その土台を持って、宇宙生物との戦争を行う話であるが、この石原の考えた最終戦争の結果出来上がった体制をトップをねらえ!の製作者らはうまく使ったのではないかと少々感じた。
 国家が死力を尽くして行う最終戦争の後生まれる絶対平和の世界。この思想は、大帝国が保有する統一による平和の成立に近い存在であった。石原莞爾の主張する世界は非常に類似点があり、面白い。殲滅兵器の予見や主義を争う戦争の出現など石原の先見性に触れることが出来るこの書は、面白い本であった。
 しかし、これだけの予想を第二次世界大戦の惨禍を防ぐために利用できなかった点は惜しまれる。

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