こころ

こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)

 昔、担任の教師がこの作品を面白い方法で授業に取り入れた。この小説の先生の遺書の部分だけを取り上げて、教材として使ったのである。そう、ここで夏目漱石の作品を読んでいるのだが、其の時は気付かなかったし、読むまで気付かなかった。さらに、先生の遺書の部分しか呼んでいないということは、読んだということに当てたくなかったのでそう書いた。
 然しながら、一ページを読んで、これがKと私とお嬢さんが出てくる作品だったのかと思った。大体国語の授業は先生の特異というべく雑談が面白かった以外は特に記憶が無いのである。この作品も、そうと分かれば興味が沸いてくる。一気に読み進めた。
 
 第一部(上)先生と私。後々の第三部(下)の主人公となる先生と私が出会って、過ごす部分。ちなみに第三部の私は周知であると思うが、先生となる。第一部は、深い。後々種明かしとなる第三部へのネタが大いに込められている。その文意を深く、正確に読み取ることは、当時連載があったときは難しかっただろう。だが、序盤で先生が死ぬことは書かれている。其のあたりだけではないのだが、この作品が持つ魅力の一つと言える。
 第二部(中)両親と私。父親が病で死期が近く、その描写。大学を卒業した私が、実家に帰って両親と過ごす。これも第一部、第三部と連携するもので面白い。
 第三部(下)こころのメインを成す部分。ここがこころの真髄である。一度読んだことがある懐かしい文章を読む。この青年らしい葛藤。繊細な表現である。この表現力には圧倒される。

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